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[マガジン PDFで読む No.1 No.2]

『ふたりのために』 ジョナサン・ベネディクト

 結婚は、おそらく人生の中で最も大きな決断の時であり、誰もがこれから始まる結婚生活に対して期待と不安を抱えていると思います。幸せな日々を夢見る一方、「うまくやっていけるだろうか」という心配や戸惑いを感じる方も多いでしょう。確かに、長い結婚生活には、山の頂きに立つような体験もあれば、谷底に突き落とされるような体験もあり、そしてその中間の、様々な体験があります。しかし、失敗を恐れる必要はありません。夫婦二人が心から満足する結婚生活を送ることが、あなたにもできるのです。だれもが憧れるような理想的な結婚生活を送り、温かい家庭を築いてきた先輩たちが、数知れずいます。

 その最も大切となる鍵は、私たち夫と妻が私たちの結婚を聖書のパターンにあわせることです。夫はどうあるべきか,妻はどうあるべきか,聖書の中では明確な模範が示されていますので,自分をその原型に合わせれば,必ずうまくいきます。たとえ,夫か妻のどちらかひとりだけでも聖書のパターンに会わせると素晴らしい効果があります。
  エペソ5章22〜33節では、夫のあり方の模範はキリストであり、妻のあり方の模範は教会であると教えています。一言にまとめるなら「愛する」と「従う」です。夫は、キリストの姿を求めて妻を犠牲的でも愛すること、妻は、教会の姿を求めて夫に従うこと。これが結婚の基本です。夫は、他の女性に目を止めるのではなく、自分の妻を忠実に愛すること、妻は、夫を支配したり操ったりするのではなく、夫の助け手として従うことです。この愛することと従うことは、特に結婚生活に摩擦と対立が生じる時に不可欠です。そこで、上手な喧嘩の仕方について考えてみましょう。

◆上手な喧嘩の仕方

 日本では、毎年約70万組のカップルが誕生し、永遠の愛を誓います。しかし人々は、ますます安易に別れるようになり、離婚が珍しいことではなくなりました。 どうしたらこの傾向に歯止めがかけられるでしょう。さらに重要な質問ですが、あなたの結婚が悲しい結末にならないようにする手段はあるでしょうか。ひとつの大切な手段は、意見が衝突した時に、いかにそれをうまく処理するかを学ぶことです。なぜなら、多くの結婚が破綻する原因の第一は、けんかの仕方が下手だからです。

◆フェアな解決を見出す

 心理学者ジェームス・ドブソン博士は、上手なけんかの仕方についてアドバイスをしています。私たちは、相手ではなく、問題を攻撃すべきだというのです。夫婦が、問題解決のためにぶつかりあう時、相手に憎しみの感情を投げ付け、むしろ問題をこじらせてしまうのもよくわかることです。例えば、その問題が、付き合いが良すぎて、帰宅が遅く、家族のために時間を割けない夫だとします。あるいは、インターネットに使う時間が多過ぎて、子どもの面倒を見ないお父さんだとします。そういう場合、妻は、困った習慣を抱えた夫に、どう話せばいいのでしょう。
  ここで、妻が陥りやすい過ちは、溜まりにたまったフラストレーションを吐き出して、夫を攻撃することです。例えば、こんなことを言います。
  「あなたは、無責任で、いつもこうなんだから」
  「自分勝手で、私の気持ちを分かってないのよ」
  「あなたには、もううんざりよ。結婚なんかするんじゃなかったわ」
  声の調子が想像できますか。これは、彼の人格と自尊心を攻撃しているのです。これは夫としてのアイデンティティを傷つけ、問題の解決には全く役立ちません。
  そうではなく、妻は、このように言ったらいいのです。
  「あなたいつも遅く帰ってくるので、わたし困っちゃうのよ」
  「二人の時間がほとんどなくて、さびしい気持ちなのよ」
  「私一人で子どもの面倒を見て、すごく疲れているの。時には手伝ってくれると助かるわ」
  違いが分りますか。前者は人を攻撃しており、後者は問題そのものに焦点をあてているのです。人を励ましつつ、問題は処理する、という風にいつも区別をつけることが必要です。ひとつの悪意のこもったことばを取り消すには、10倍から20倍ものほめことばが必要だと言います。人を傷つけ、おとしめるのではなく、問題の根源を処理するように注意すべきです。

◆思い込みによるすれ違い

 ドブソン博士はまた、夫婦の口論の原因として、思い込みからくるすれ違いをあげます。どちらも言い争いをしたいわけではないのに、夫と妻が違った期待を持っていたために、火花が散ることがあるのです。
  例えば、二人の小さな子どもがいる夫婦がいたとします。夫は一週間懸命に働き、家でリラックスできる週末を楽しみにしていたとします。一方、妻は一週間洗濯をし掃除をし、子どもに食べさせ、世話をしてきました。週末ぐらい一人で買い物を楽しみたいと思っています。この時点では、二人とも自分の願いを口に言い表わしてはいません。
  土曜日の朝になり、思ってもいなかった衝突があります。夫は、朝寝をし、一日好きにする自由があると感じています。そして妻は、外出できないので欲求不満になります。どうしたらこのような衝突を避けられるでしょう。ドブソン博士は、お互いを驚かせないように、互いの計画や相手への期待についてよく話し合う習慣をつけるようにとアドバイスしています。もし準備さえできていれば、私たちはどんな状況も処理することができるのです。

◆口論を上手に避ける

 新婚一年目の夫婦は、車の運転の初心者のようです。初心者は、普通まっすぐ前を見ることしかできません。ひたすら運転すること、ギヤをチェンジして、クラッチを入れること、ウィンカーを出すことなどに気をとられて、他の車のドライバーや歩行者が何を考えているかを思う余裕がありません。それで初心者マークの車は、傷や事故が多いのです。しかし、運転に慣れてくると、先を考えることができるようになり、事故を避けられるようになります。そのように結婚生活が長くなれば、だんだん相手を傷つけるような衝突を回避できるようになります。
  一年目は、夫も妻も違った意見を持っていて、自分の言い分を譲らないことが多いので、それがひどい口論に発展するのは目に見えています。愚かなことに、私たちは時々、互いの平和を保つよりも、議論に勝つことを優先しがちです。
  夫は、家庭のリーダーとして、最初に引き下がり、和解への第一歩を自分から踏み出すべきです。もし彼が謝れば、対立は終わります。多くの場合、口論の種は、どちらも譲れないような重要問題ではないのです。一方、大切な問題である場合は、自分の意見を押し通そうとするよりも、二人の一致点を見出す努力が必要になります。
  ある結婚カウンセラーは、相手に邪魔されないで自分の意見を言えるように、スプーンのような手軽な小道具を使うとよい、と言います(これは、相手を叩くためではありません)。スプーンを持っている人だけが話すことができ、相手は、片方が言いたいことを言い終わるまで口を閉じている、という約束を交わすのです。言い終わったら、スプーンを相手に渡し、受け取った人が口を開き、相手は静かに耳を貸すのです。こういう工夫をすることによって、冷静に会話ができますから、緊張と怒りが沸き上がって、戦闘状態に入るのを止めることができます。
  「口を開くと言い争いになり、歯止めがきかない」というカップルは、手紙を書いたらどうでしょうか。心が静まり、物事をもっと客観的に眺めるのに役立ちます。私と妻も、結婚一年目の頃、何度か言い争って対立していた時に、手紙を書いて互いの気持ちを伝えたことがありました。
「聞くには早く、語るにはおそく、怒るにはおそいようにしなさい。」(ヤコブ1章19節)

◆お金の使い方

 夫婦関係が気まずくなる原因のひとつは、お金の使い方です。お金は、社会でも重要な役割を果たしており、夫婦はお金をどのように得、またどのように使うかを十分に時間をかけて話し合い、一致を見出さねばなりません。
  結婚してから私は、妻のベッキーが、お金について、かなりのしっかり者であることに気づきました。「子どもの時から、衝動買いをしたことは一度もない」と彼女は言います。実は、十代の時、時計屋さんの前を毎日通って目をつけていた時計がありましたが、二年たってやっとその気に入った時計を買ったのだそうです。注意深く貯金し、将来のために計画を立て、決してリスクのある出費はしないタイプの女性です。彼女は結婚して間もなく、夫(つまり私)が、全く違うタイプの人間であることを発見したのです。私はもっと気前のいい性格で(これは、母ゆずり)あまり将来のことを考えもせずに、人のためにすぐお金を使ってしまうのです。私は、「経済的な問題が出てきたら、その時に解決すればいい、その時までは、お金は死蔵するためにあるのではなく、使うためにある」という主義でした。
  結婚してほどなく、私たち二人は衝突し、口論から不信に陥り、互いに妥協して中間点を見出さなければならないことを知るまでに、かなり時間がかかりました。私は、お金を賢く管理することを学ぶ必要がありましたが、妻は妻で、お金を出し渋らないことを学ぶ必要がありました。

◆帰宅するのがつらい  

 結婚8年後、私には、職場から帰宅することがつらく感じられた時期がありました。そのころ私は中学校で英語を教えていましたが、学校が面白すぎて家に帰りたくなかったのではありません。受け持っていた中二のクラスは、しつけがなっていない手のかかる生徒が多くて、午後の授業が終わる頃には、私はへとへとになっていました。外で働く人なら誰でもそうでしょうが、家ではゆっくりと、新聞を読んだりテレビを見たりしたかったのです。でも、それはかなわない望みでした。
  私が帰宅して玄関のドアを開けると、私の帰りを首を長くして待っていた子どもたちが、私に飛びかかって来るのです。帰宅したら、ソファでのんびりとくつろげるどころか、その頃三人いた子どもが走り寄ってきて、あれこれとおしゃべりし、遊んでくれとせがむのです。
  妻はと言えば、「おかえり!」と、にこやかに迎えてくれる時もありましたが、嫌なことがあった日などは、むずかる赤ちゃんをいきなり私に押し付けて、「さあ、今度はあなたの番よ、あたし、ちょっと気晴らしに散歩してくるから」と、さっさと出かけてしまうこともありました。
  静かな我が家で、学校での緊張を解くどころではありません。ネクタイをとく暇さえないのですから。しかし、それが現実なのです。父親であることは楽なことではありません。正直に言えばあの頃、夕方になると、帰宅することを考えただけで、ストレスのあまり胸やけを感じるほどでした。
  残念なことですが、多くの男性には、仕事が終わってもそのまま家には帰りたくない、という時期があるように思います。狭いアパートに帰ってうるさい子どもやヒステリックな妻の顔を見るよりも、同僚と飲みに行ったり、パチンコをしたり、街をぶらついたりしたいでしょう。
  父親は、家庭の長であり、多くの場合唯一の働き手であり、子どもの保護者であるのに、家に帰ることを思うと気が重いのです。船に乗りたくない船長のようで、困りものです。どうしたらこのジレンマを解決できるのでしょうか。

◆耳を貸す

 ある日、帰宅途中に、こんな考えが浮かびました。「子どもはぼくの注意を引きたがり、妻は話したがっている。それならネクタイをとってリラックスする前に、ぼくの方から時間をとってあげよう。家族と顔を合わせて話を聞き終わるまでは、自分の『仕事』は終わっていないのだ」と、自分に言い聞かせたのです。
  いつものように疲れてはいましたが、その日は、「一日の最後の仕事をするぞ」という気持ちで帰宅しました。ドアをあけると、やはりそろって、私の帰りを待ち構えていました。
  「パパー!」と言って子どもたちは走ってきます。犬も尻尾をふって駆け寄ってきました。私は愛犬をなでてやり、子どもたちが学校や幼稚園で作った作品を見ました。妻はその後ろに立っていました。
  「今日はどうだった?」と彼女に声をかけ、一日の出来事を聞いたのですが、こうしたこと全てに、ほんの五分しか、かからなかったのです。子どもたちは間もなく部屋に戻って遊び始め、妻は台所へ夕食の仕度に戻り、犬もソファに戻って丸くなりました。私は、居間に一人残されたのです。これで、ようやく私のその日の仕事は終わったのだと思いました。家に帰るのがあれほどおっくうだった気分は消えていました。私に必要だったのは、家族のために自ら進んで僅かばかりの時間をとり、その話に耳を貸すことだったのです。
  私はその日、夫また父親の役割について大切な教訓を得ました。それは、妻と子どもの話に耳を傾けるという役割です。家族は、自分たちの生活に関心を持ち、積極的に関わってくれるお父さんを必要としているのです。

 私たち男性は、帰宅すると、殻に閉じこもってストレスから逃れようとします。妻が一日どれほど散々な目に遭ったかを聞く気にはなれません。自分の仕事上のトラブルを話しても仕方がありません。子どもと遊ぶ元気も残っていません。家族には、ただもう放っておいて欲しいのです。しかし、そうやって家に帰っても、家族の必要を無視して、家族との心の触れ合いをしないなら、現状は悪化して行くだけです。家庭問題の原因の多くは、とても単純なものなのです。ほんの数分、あなたの注意を家族に注げば、それで奇跡が起きるのです。
  最近では妻の話を聞くのに、私は帰宅するまで待ちません。昼休みに電話をします。ことに彼女が一日中子どもの相手をしていて、大人と会話するチャンスに恵まれなかった日などは、これがとても喜ばれます。

ジョナサン・ベネディクト『ふたりのために』(1,500円+税)より抜粋
FFJのベストセラーとして親しまれています。分かりやすい結婚入門としてお勧めします。


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